TSUCHIYA
土屋仁応さん

彫刻家

※経歴・内容はインタビュー当時のものです。

何気ないひと言からのはじまり

子どもの頃、折り紙を切り抜いたり厚紙を貼り合わせたりして立体工作をすることが好きでした。そんな僕に母や幼稚園の先生が「工作が好きなら彫刻家になったら?」と言ってくれました。絵が好きな子に「画家になったら?」というような軽い感じでしたが「一日中好きなものを作る仕事があるのか」という気持ちで、今の職業を意識しはじめました。

ショナビとの出会いが、
その後の自分に影響を与え、
スタイルを形作った

高校は普通科高校に進学しましたが、中学の友人の一人が美術系の高校に進学していたのを見て、美術の学校があることを知りました。高校一年生の頃に、美術科の先生に美大について相談したのがきっかけで、冬期講習会から湘南美術学院に通い始めました。

予備校では厳しめのコメントを言われても納得できたし、先輩たちのように上手になりたい、もっと上達したい、という気持ちになりました。何より、高校とは違った友人や先生と知り合って過ごした毎日や、日々出題される課題がすごく新鮮でした。

予備校時代からずっと繰り返し講師から聞いていた「螺旋の動きが彫刻の基本」というアドバイスは、今でも作品を制作する時のポイントになっています。しっぽの向きや足先の動きひとつで空間の印象が変わるのは、難しいところでもあり、創作の楽しいところでもあります。

作品を制作する上で、生命感を表現するなら縦方向に伸び上がるような動きを出すことが基本ですが、あえて寝そべったり座ったりした抑えたポーズで作ってみることがあります。そのなかでふわっと軽い幼い命が寝そべっている雰囲気を出すには、「作品と台の設置面で素材の重さや質感を表現する」という、予備校で学んだ基本を思い出しています。

子鹿(2010)

美術以外の様々な分野にも
目を向けてみる

学校の教科でいうともちろん美術が好きでしたが、生物や文学や歴史など、美術以外の分野で好きだったことから得るヒントを作品に還元していると感じることが多いです。いろいろな教科や部活や趣味など、複数の関心事の混じり合った部分がその人の個性だと思うので、いろいろな分野の関心事を育むのは大切だと思います。

一つ一つの課題に真剣に取り組むことでしか得られない発見があります。次々と課題が続く予備校時代は、「作りだす基礎体力」を培う期間だったと思っています。失敗や反省や達成できなかった気持ちを次の課題・作品に活かすことで、前に進んでいけるのではないかと思います。

子犬(2011)

PROFILE

神奈川県立 追浜高校出身
湘南美術学院[ 基礎科 > 彫刻科 ]> 東京芸術大学 大学院 博士課程 修了

2001東京芸術大学 美術学部彫刻科 卒業
2007東京芸術大学大学院
文化財保存学保存修復彫刻博士課程修了
2008特別展「ANIMAL FANTASY イヌイト・アート&動物たち」
北海道立近代美術館・北海道
企画展示「ワッと!どうぶつ What? アート展」
十和田市現代美術館・青森
2009個展「夢をたべる獏が夢みる夢」
MEGUMI OGITA GALLERY・東京
個展「彫刻新時代vol.3 土屋仁応展」
日本橋高島屋美術画廊X・東京
2010特別展「創造と回帰 現代木彫の潮流」
北海道立近代美術館・北海道
2011企画展「集まれ!おもしろどうぶつ展」
横須賀美術館・神奈川
個展「私的な神話」
MEGUMI OGITA GALLERY・東京
2012個展「聞耳の森」
MEGUMI OGITA GALLERY・東京
作品集『聞耳の森 土屋仁応』刊行(求龍堂)
特集展示「横須賀・三浦半島の作家たち」
横須賀美術館・神奈川
2015企画展「しむらのいろ meets 土屋仁応」
フクミシムラギャラリー・京都
2016開館90周年記念展「木々との対話」
東京都美術館・東京