AO
青 秀祐さん

現代美術作家

※経歴・内容はインタビュー当時のものです。

講師のアドバイスで
花開いたスタイル

高校3年生になる春、美術の先生から美大受験を勧められ、湘南美術学院を知りました。各科紹介で展示されていた講師の自由な作品を見て、日本画であっても科にとらわれずに好きなことをやってもいいとわかり、日本画科に入学しようと決めました。

とはいっても、絵を描くことが初めての自分と比べ、周囲はとても上手く、このような経験者たちと同じ土俵で戦わなければいけないのかと、受験に対し不安を感じていました。そんな中、夏期講習会もすぎた秋頃、ノートに描いてあった戦闘機のメーターの落書きに目を留めた講師から「自分の好きなことをもっとやっていいんだよ」と言われました。当時は自分の好きなことと受験のデッサンがどう繋がるのか、すぐには理解できずにいましたが、講師から様々な作家の作品を見せてもらったことがアドバイスとなり、受験に前向きに取り組むことができました。

Phantom Scales(2016)
布にデジタルプリント W16m × H4.5m
META real (神奈川県民ホールギャラリー)撮影協力:和田高広

幼少期の原風景
– 父の仕事から受けた影響

私は自己表現として現在の作品をつくっていますが、モチーフに軍用機を使うのは、父の仕事が自衛隊だったことが背景にあり、自分にとって軍用機は生まれた時から身近に存在する生活の一部でもあります。しかし、自分にとって身近なものであっても、人によっては様々な考え方があり、その見え方は大きく変わってきます。自分の作品は展示する場所も含め、見る人にいろんな見方や意味を提示するものでありたいと考えています。

FSS Type-F 05(2013)
和紙にレーザープリント、モーター、電子部品、単三乾電池、他

「やり始めたら、やめない」

大学卒業後も関係の続いている予備校の講師からギャラリーの方の紹介があり、海外や青森県立美術館など様々な発表の機会をいただいています。まさか、自分がニューヨークのギャラリーで展示することになるとは思っていませんでしたが、何かを成し遂げる時の喜びや制作した作品が自分の手を離れ一人歩きをする瞬間はとても面白いです。

活動を見てくださった大学の恩師の紹介もあり、現在は多摩美術大学の非常勤講師として勤務していますが、学生から「作家活動もしたいが、就職も考えないといけない」と相談を受けることがあります。作家活動を不安に思う人もいるかもしれませんが、それを上回るほどの達成感や楽しさを感じられる仕事だと思っています。

作家になることに遅い、早いは関係ありません。むしろ何も知らないまま作家になるより、10年働いて社会を知ることで作品作りにより良い影響を与えるかもしれません。美術の持っている懐は深いですし、皆さんが思っているよりも美術は多くの可能性を切り開いていくパワーを秘めています。自分の選んだ道に自信を持って、前向きに取り組んでいってください。

日本画科前主任の吉田有紀先生(現武蔵野美術大学日本画学科講師)から多くの影響を受けたという青さん

PROFILE
横須賀市立 横須賀総合高校出身
湘南美術学院[ 日本画科 ]> 多摩美術大学 日本画専攻 卒業