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建築科SPコンテンツ「建築科 課題解説」

建築科は何する科?

あまり周知されていませんが、建築科は“やるべき事”の多い科です。なぜそうなのでしょうか?

我々は将来“設計”に携わります。小さなデザインから、家具、インテリア、住宅、公共施設、都市計画。私的なものから公共のものまで。多岐にわたる分野とスケールを行き来します。まだ世に存在しない計画を具現化させていく社会に対しての提案者になるわけです。まだ見ぬものの提案から設計・施工監理を行います。当たり前のことですが、建物ひとつつくる時、全体の概要からディテールに及ぶまで、形、構造、寸法、素材、工法等、予算調整、社会的提案、それらすべてを取り仕切る役を担います。それが設計者です。そのため単にデザインをするだけでなく職能として様々な断面を考察し関連性の均衡をつくっていかなくてはなりません。それを目指す科なので、やるべき事が沢山あるのは必然なのでしょう。

 

そんな建築科の、受験に必要な力、求められる力は、実技修練で得たもの・身に付けたものの上澄みを行使するイメージかもしれません。物凄い描写力や完成度よりも、共有と共感を生む表現力をいかにして構築していくか、その検討の量や発想力、計画性を問われる科です。この上澄みは広く深い基礎に依存しています。例えるなら富士山の裾野の広さや、氷山の一角といったイメージです。ショナビの建築科では、1年を通して、この広い裾野や、水面下の氷塊を築くために、様々な種目に取り組んでいきます。

【スケッチ/クロッキー】〜感覚的速記〜

パースや図法といった理屈に頼ることなく、感覚的に対象を捉える修練。論理的に裏付けられた力と平行して、印象や感覚が持つ力も大切にしてください。

効率的に修練するために、対象を便宜的に分別してみる。人体/工業製品/自然物/空間。これで大概は網羅できるはずです。建築科が将来目指すところの建築は、これらすべてが内包されています。ひとつの空間を設計すると、庭や外回りには植栽があり、素敵な家具や家電が並び、必ずそこには人の活動が生まれます。貪欲に何でも描けるようになってください。

またクロッキーは日常の中に“興味の対象”を見いだす練習でもあり、そのアンテナの感度を研ぎ澄ます役割も担っています。我々の描く行為には同時に観察、洞察することが付随しています。幼稚園を設計する際には、子どもの活動とそれを見守る大人の活動と社会におけるその在り方を知らなくてはなりません。

そしてもう一つの役割として、エスキース上でのイメージの定着に重要な役割を果たします。速記ができれば、頭の中に次々とわいてくるアイデアやイメージを逃さず描き留めておけます。この頭と手の楽しい追いかけっこを早く経験してください。

ひとつ到達の目標は、空間のスケッチであれば狙った範囲を自由自在に切り取り構図化できること。もの単体なら画面の狙った位置に狙った大きさで収める。形は出来るだけ違和感のないように。内部構造まで見通すような意識で。線画の状態で誰が見ても形や空間が認識できると良いでしょう。とにかく最初は量。ひたすら量。そしてだんだんと質と量を入れ替えていってください。

 

【静物デッサン】〜みる≧描く〜

言わずと知れた美術教養の基本。画面に収める構図感覚。鉛筆の使い方。素材や光の観察と表現。なにより個々で大切なのは“よくみる”ことだと思います。多角的に対象を捉える。6時間経た後でもまだまだ発見できることがあるはずです。この執着は「みえていないものは描けない」という考えに基づいています。少し言い換えるなら“意識できていないものは表現できない”でしょうか。モチーフにまつわる光や影/陰を、その場のその瞬間を含めて“意識”してください。多分それが本当の意味での俯瞰であると考えています。

建築科では、コンクリートブロック、レンガ、角材、瓶、缶など、基礎形態感の強いモチーフを多く用います。個々の形状も大切ですが、それらの組み合わせが生み出す構成・隙間や抜け・量感・距離感・陰と影・光の状況が特に重要です。それらを総称して“空間”と呼んでいます。ここでの得たものは後々想定系のデッサンでの表現力につながっていきます。引出しを満たしてください。

 

 

【建築写生】〜空間を感じる〜

季節ごとの陽射し、吹いてくる風、草いきれ、人の往来。大きくてリアルな空間を頭と体に取り込みます。あまり意識はしないと思いますが、それら五感での空間体験が知らず知らずのうちに経験値として積まれていきます。また社会的な存在/立場として、公の場で画を描く行為はことのほか目立ちます。色々な人から声を掛けられ、想定外の状況が生まれることも多々あります。そのような状況で、どのように立ち振る舞い、目的を達するか。それも建築的な大切な学びになっていきます。

技術面では、実空間上での距離感・スケール感や、色彩の明度・彩度を学びます。また、制作行程の組み立ても大切な要素です。今の作業と次作業の関連性や因果関係を理解し制作行為全体を俯瞰していくことが上達への近道です。

 

【立体構成】〜学びが沢山詰まった宝箱〜

課題文から条件を読み取り、そこへやりたいイメージを付加し、案を具現化させます。

「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」このバランスが問われる種目です。特に真剣勝負感が強く、時に“立たなかった”という状況に落ち入ります。そこには様々な原因があり、大きくは、「計画上の問題」「構造上の問題」「技術的な問題」に分別されます。まずはその原因を見極めることが大切であり、ひとつの課題を学び尽くす大切な作業です。立体が立たない大きな原因は先に述べた3つのバランスが崩れていることに尽きると思います。大概の場合、格好いい・面白い・凄いといった制作を目指すと思いますが、立体構成の場合、それなりの裏付けがないと具現化されません。そのためついつい飛躍してしまう目的意識を、簡単・単純なことを、格好よく・面白く・凄くしていく方向に修正してみるといいかもしれません。少しの操作で形態感や空間性が激変する感覚を焦らず欲張らず経験してください。

発想から実空間を立ち上げていくので、かなり建築設計に近い種目です。イメージと現実の調整、材料の量的・強度的制約、施工性・技術力。立つか崩れるか、力学的構造感覚。イメージから寸法を決めて展開図を描いて工作する作業計画性。そして立ち上がった立体構成は、再びスタディの素材になります。具現化した空間/立体造形をもとに更なるスタディを重ねてより良い空間や形を模索しましょう。

 

【想定系課題/空間構成・総合表現】〜すべての種目はここに集約される〜

「あなたの空間的、美術的、興味は何ですか?それを条件の中で表現してください。」そう問われているものと考えてください。自分なりの”格好いい”や、世界観、造形が問われます。常日頃からアンテナを張り、引出しを増やし早くそれを満たしていきましょう。それには一般的な建築的素養に加え、自分なりの“空間論”や“造形論”が必要です。そして、ここでもう一つ重要なことは、それらの“興味”や“持論”が一般論、社会性の中でどのような立ち位置にあるのかを俯瞰し、自覚することです。公共性を要する“建築”科は独りよがりでは成り立ちません。そして、経験したすべての種目で得たものを総動員してエスキースを行ないます。その際にひとつ大事なことは、無限の可能性の中から、目的と手段の相性を検討していく際の指針、設計主旨/コンセプトにあたるものです。表現するものが何なのか明確にする。そのまだ見ぬ世界・空間を描写する為に沢山エスキースを重ねてください。可能性を案として比較検討していくエスキースはとても重要な過程です。筆1本、紙1枚あれば無限の世界を構想することができる。自信と誇りを持って挑んでください。

 

 

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